どこで何してますか、生きてますか

私はめったに泣かないんですよ。小さい頃から父親に「男は絶対に泣くな!」と厳しく教育されていたせいで、涙を異常にガマンする癖が付いてるんですよね。大好きなじいちゃんが死んだ時も泣かなかったし、大学に2度も落ちた時も泣かなかった。少なくとも中一ぐらいからまともに泣いた記憶が無いです。

 

だけど1度だけ、高校生の時に1度だけ涙が出たことがあったんですよ。

 

私は高校生の時、「いい人」だったんですよ。陰キャ陽キャ分け隔てなくおしゃべり出来る、ちょっと変わっててイジられるけどキチンと気を遣って笑って対応できる、自分で言ってて恥ずかしいですけど、そういう「いい人」の自分をそれなりに演じられていたと思うんですよ。

 

だからクラスに馴染めてない「可哀想な人」は俺が話しかけて輪に入れてあげなきゃ、みたいな、そんな偽善も同時に持ち合わせていたんですよね。

 

ある日、英語の授業でペアを作れと言われた時に、1人だけあぶれて窓際の席で不貞腐れてる女の子がいたんですよ。「いい人」の私としては見過ごせないですよね。私は直ぐにその人の元に行って、「〇〇さん、俺と一緒にやろうぜ!」と気さくに声をかけました。

するとその子は

「何、気を遣ってくれたの?別にいいのに、先生とやるから」

とつっけんどんな対応。

愛想悪い女だな、と思っていながらペアワークを続けていると、

 

「長崎くんはいい人だよね。」とポツリと一言。

悪態からの意外な一言に驚いていると彼女は続けました。

 

「長崎くんは陰キャ陽キャ関係なく話せるし、変わってるってバカにされてるけど気に病むことなく我を通してる、私とは住む世界が違うほど「いい人」だと思う」

 

も、君みたいな人が、将来ふとしたきっかけで自殺しちゃったりするんだろうね」

 

その言葉を聞いた瞬間に、ドバっと涙が出てきたんですよ。泣いたのがあまりにも久々で、涙が涙腺を通った感覚がしたのを今でも覚えてます。

「え!?ごめん、傷付いた?ごめん、無神経な事言った…」と慌てる彼女に、私は必死に「大丈夫!大丈夫!これは全然違くて…」と弁明しました。

 

決して彼女の言葉に傷付いたわけじゃないんですよ。むしろ、その言葉が図星だったというか、「そうなる」未来がもしかしたら本当にあるかも、と想像出来てしまったことにビックリしちゃったのと、彼女が普段から「そういうこと」を考えて生きてるんだなと思ってすごく切なくなっちゃったんですよ。

 

本当はもっと複雑な、ややこしい感情がその涙には含まれていたのかもしれないですけど、うまく要約するとそういうことだったんだと思います。

 

今となってはもう、その女の子の名前も思い出せないんですよ。

 

実家にある卒業アルバムとか見れば思い出せるんでしょうけど、別にそこまでしてはっきりさせるような事じゃないし。

 

あの女の子、今どこで何してるのかな〜って、たまーに思い出すのと同時に蘇ってくる、私の中では妙な思い出です。

 

ちゃんと生きてるし、死ぬ予定もないから大丈夫だよ〜

 

まあ、そんな感じです。