過去に私、2度も死にかけた経験があるんですよ。
1度目は8歳の時に海で離岸流に流された時。
そして2度目が、17歳の、夏…。
今回はその17歳の夏に起こった出来事について語りたいと思います。
私は高2の頃から仲のいい2人とバンドを組んでるんですよね。とはいえそんなガッチガチにやってるバンドではなく、好きな曲をゆるくカバーしていく仲良しバンドなんですけど。
ボーカルの保井実(ホイミ)と、キーボードの藤田洸平(フジコ)。そしてドラムの私という3人編成でやってました。
んで高2の夏休みのある日、フジコが誕生日を迎えるんで私とホイちゃんはホイちゃんの家でフジコの誕生日会をやろう!って発案して、2人でサプライズパーティーの準備をしてたんですよ。
ところがフジコが予定より早く到着することになったんですよ。
でも準備はまだ終わってない!
焦る私にホイちゃんが提案します。
「アタシが駅にフジコを迎えに行って、ダラダラ喋りながら歩いて時間を稼ぐから、ハルはこれやっといて!」
ホイちゃんが私に渡してきたのは、45Lの業務用純粋ヘリウムガスボンベ。
これをゴム風船に入れて、部屋いっぱいに浮かべろと言ってきました。
ヘリウムガスボンベなんてどこで買ってきたの!?って聞いたら普通にAmazonで売ってたみたいです。Amazonすげ〜。
そしてホイちゃんは「大体15分位で帰ってくるからそれまでに頑張って終わらせて!」と言い残し家を出ていきました。
15分で部屋いっぱいの風船か…かなりハードだけど頑張れば終わらんこともないか…。
私はすぐに作業に取り掛かりました。
そして事件はここから始まります。
最初の5分ぐらいは真面目にやってたんですよ。
でも単純作業ってなんか色々考え事しちゃう。
私は傍にあったガスボンベを見つめて考えました。
「業務用純粋ヘリウムガス」ってことはァ〜。
パーティー用の変声ヘリウムガスよりヘリウムの純度が高いってことだからァ〜。
…吸ったら信じられないぐらい高い声が出るんじゃね!?!?
…と。
そして私は好奇心のままに、大きく息を吐き、ボンベから伸びるチューブを咥え、ガスを思いっ切り吸い込みました!!!!!!!!
そしてその時。
突如目の前が真っ暗になりました。
え!?何!?停電!?
いや、そんなわけない、今は昼間だし…停電したとしても真っ暗になんてなるわけないだろ。
…じゃあなんで真っ暗になってるんだ??
…あれ?
なんか呼吸がおかしい。
…息ができない!!!!!
これは停電じゃねえ!!!!!
俺の視界がブラックアウトしてるんだ!
後でわかったことですが、業務用の純度が高いヘリウムは吸い込みすぎると酸欠で視界がブラックアウトした後に失神するそうです。
しかしそんなことはこの時の私は知る由もない。
息をしようにも、口がパクパクするだけで、酸素が全く入ってこない。頭から血の気が引いて、全身がどんどん冷えていきました。
やばい!!!…死ぬ!!!
このままじゃ死ぬ!!!!!!!
ちょっとやめて!俺の中のルフィ!勝手に覚悟決めないで!まだ死にたくないよ俺!!!
めちゃくちゃ苦しい。目眩もする。視界もきかない。
朦朧とする意識の中、私は感覚だけを頼りに窓へと向かいました。
そう。なんやかんやしてるうちに、ホイちゃんが家を出てからそろそろ15分。
…ホイちゃんとフジコが帰ってくる!!!
窓を開けて叫べば、彼らが助けてくれる!
私はなんとか窓に辿りつき、窓を開けました。
……ああっ!!!!
霞む視界の中で、遠くにこちらに向かってくる2人の姿が見える!!!!!!!!
奇跡のタイミングでした。
早く!!!!早く助けを求めないと!!!
痙攣する肺に発破をかけ、全力で声を振り絞って私は叫びました!!!!!
「たちゅけてぇ〜〜!!(超高音)」
閑静な住宅街に響く超ソプラノのSOS。
なんだこのふざけた声!?!?
そういやヘリウム吸ってんだからそうなるわな。
ヘリウムを吸うのは二つの意味で危険です。
1つは窒息するから。
もうひとつは、助けを叫んでもギャグにしか聞こえないからです。
明らかに異常なその様子に2人はダッシュで私の元へ駆けつけてくれてなんとか私は助かりました。
なんか落ち着いて呼吸したらすぐなおりました。よかった〜〜〜〜〜。
窒息の苦しみは随分と長く感じたけど、後々よく考えればヘリウムを吸ってから窓から叫ぶまで大体20秒ぐらいだったような気がします。すげ〜。
とまあ、これが未だにホイちゃんとフジコにネタにされる、
「たちゅけて事変」
の全貌です。
まあ、そんな感じです。
皆さんも純度の高いヘリウムは吸わないように。吸うならちゃんとパーティー用のやつね。