実は私にはあるジンクスがある。それは「私がバイトした店は近いうちに必ず潰れる」というものである。
私が最初にバイトしたのは15歳の時のホテルのレストランの皿洗い。
その店のウリは「犬や猫と一緒に食事ができる!」というもので、そのとおりお客さんは皆それぞれに愛するペットを連れて来ており、食事をしながらお互いに交流をしていた。
苦痛だったのは、シェフが着るいわゆる白の制服の上下と帽子を私も着用するのだが、当時の私は相当太っていたためサイズがなく、毎回ズボンのボタンをぶち壊していたことだ。穿いた瞬間にボタンは飛び、皿を洗えばボタンは飛んだ。
エビやカニの殻で手を切り、血まみれになりながら下半身をさらけだして皿を洗う私の場所では、ボンボンと皿を置かれる小窓程度のスペースしかなく、犬や猫を見たくてもそこからではせいぜいダックスフントの短足や店長の豚足ぐらいしか見えない。
向こうの客からは全身から血を吹き出しながら皿を洗う私の姿がかすかに見えていたのかもしれないが、動物ごときに興味のない私は人手不足でホールに駆り出された時に1度見ただけでそれ以来動物たちを見ていない。
そんな動物臭いところで食う飯は不味いのか、皿に私の血液がついていたのかは謎だが食事を残す客が多かった気がする。
元来人間とのコミュニケーションをとるのが苦手な私はバイトに行くたびに同期のバイトのやつが厨房のシェフたちと馴染んでいくのを肌で感じ孤独を感じていた。
そんな誰にも心を開かない私が唯一楽しみに楽しみにしていたのは、ホールの連中が厨房に戻ってくる前にまかないを食い散らかすことだった。
野球の部活を終えてバイトに来る食べ盛りの寡黙な青年は、バイト終了後まかないを食いつくし、いちもくさんに帰るのを唯一の楽しみとし、やがてそれが楽しくないことに気づきバイトをやめた…。
そして私がやめたわずか2ヶ月後、ふと元バイト先のホテルを通りがかるとそのレストランは無くなっていた…。
破壊王長崎、その伝説の幕開けである…。
……To be continued