破壊王長崎 その2

前回の動物レストランに続き、今回の破壊王長崎の次なるバイト先は、

 

「ピザ屋」である。

 

知らない人も多いと思うが私は高校生の時点で原付バイクの免許を取得しており、よってピザ屋のバイトでバイクでピザの配達をすることが可能だったのだが、これが私にとっての悲劇の幕開けだった。

 

それは、そう、ある年のクリスマスのことだった…。

 

クリスマスはピザ屋にとって最も稼ぎ時で、その日は店の電話が鳴りっぱなしだった。そんな忙しさの最中、いつものように私は頼まれたピザを配達しようとしたのだが、そこで店長に呼び止められる。

 

「今日クリスマスだから、この格好して行ってね」

 

そう言って手渡されたのはサンタクロースのコスチュームだった。

 

おい店長よ、頭パープリンなのか?

これを着て人前に出ろと?

 

ソリでなく屋根付きピザバイクで街を駆け抜けるサンタクロースなど傍から見れば愚かすぎるし、確実に子供の夢を壊す。

でも店長の命令なので仕方なくそれを着込み、私は原付で街へと繰り出した。

 

そして15分ほどバイクを走らせ目的のマンションに着くと、私はピザを持って受付のおばさんに話しかけた。マンションにはセキュリティがあるので、ここを突破しないとエントランスのドアさえ開けられない。

 

「すみません、ドミノピザですけど、204号室にピザの配達に来ました」

「あードミノさんね、はい、鍵開けましたよ」

「サンキュー!ほらよ、これでもとっときな!」

 

おばさんの顔面に一発パンチを決めると、私はエレベーターにのって目的地へと向かう。

 

部屋に着きインターホンを押すと、若い女の人が顔を出した。

 

「ありがとうござ…うっわサンタの格好してるよ!」

 

相対するなりいきなり罵声を浴びせられる私。貴様のその白い服も血でサンタ仕様にして差し上げましょうかお客様、と言いたくなるのをどうにか堪える。

 

「マジでサンタの格好してんの?ウケる」

 

部屋の奥から聞こえる彼氏的存在の声。

こうして私は今日いっぱいこの2人の会話のオカズにされ、私は帰ってからこの2人をオカズにする。まさに食物連鎖の縮図だ。悲劇だ。悲劇すぎる。クリスマスに恋人同士で乳くりあっているこいつらと、1人バイトに勤しむ私。私は私の人生を呪った。

 

そして注文されたピザを渡し、代金を頂戴する。

「ほらよ、おつりだ。これとっときな!」

隠し持っていたワルサーP38で女の土手っ腹にドカンと鉛玉をくれてやると私は警察が来ないうちマンションを出た。

 

そして全ての配達を終え店に戻っていると、交差点の信号待ちで後ろのパトカーに突然、

 

「前の原付の方〜職質よろしいですか〜?路肩に寄せてくださ〜い」

 

と呼び止められる。またか。

大人しくバイクを路肩に寄せると、パトカーから警察が降りてくる。

何を言われるかは大体、想像がつく。

 

「君いくつ?無免許じゃない?免許見せて?」

 

やっぱり。

 

私は童顔のせいか年齢の割に年下に見られる事が非常に多く、この手の職質はこれで2度目だ。免許だってもちろん持っているのに。

 

「18です」

「免許見せて」

「仕方ないな〜…ほらよ!喰らえ!!」

 

懐から取り出したワルサーでポリ公の眉間に風穴を開けてやると私はバイクに乗り込み店へと帰った。サンタの格好は返り血が目立たなくて助かる。

 

まあそんなこんなで殺人行為に嫌気が差した私はすぐにピザ屋のバイトをやめた。

 

そしてしばらくした後、ふと通りがかるとピザ屋はなくなっていた…。

 

 

 

まあ、そんな感じです。

 

ここで語った私の暴力行為、および殺人行為についてはもちろん嘘です。

 

破壊王長崎の伝説は…まだまだ続く…。